1998/10/23(金)

中断前の日記(7月最終分)へ


きのう/きょう/あした


「Gao」同志の話

「Gao」同志の話と言っても、人のことではない。「てへん+高」という中国語の動詞である。
昔、香坂先生が「新語新釈」か何かの本で、こういうタイトルの項を書かれたことがある。「Gao」同志は四川の出身だが、今では全国的に知れ渡っているというような話であったと思う。「普通語」の中には方言語彙がたくさん入っているが、その代表が「Gao」というわけである。
この言葉は非常に便利で、中国語ではよく使われる。
我gao語言学。這個問題應該gao個清楚。我gao錯了。・・・・・
ところで、こちらに来てからは大陸の人よりもむしろ台湾の人と接する機会が多い。バーバラさんの家でホームステイをしている中にも台湾の女性がいる。その人と中国語で話している時、「私の專門は・・」ということでこの「gao」を使ったら、彼女曰く。「それは大陸の言葉ですね。すぐわかります。「gao」は台湾ではほとんど使わない」とのこと。台湾か大陸かの違いを最も反映しているのが、どうやら、この「gao」らしい。語彙というのは社会の変化に敏感に反映するものであるが、台湾の人と話しているとこの手のものにしばしば出くわすことがある。また、日本語語彙が、「生」で入り込んでいるのも台湾の中国語の特徴であろう。リンゴは発音もそのまま「リンゴ」であるし、「弁當」もそうだ。
語彙が違うという話なら、これも先日、燕京の台湾から来ている博士課程の学生と話していて、実に面白いことを言っていた。彼によれば、話していれば、カソリックかプロテスタントか、仏教徒かすぐにわかると言うのである。
なるほど、言語とは人の認識の表現であり、人を離れては存在しないものだということを改めて痛感した。
燕京図書館員の中には台湾出身の年輩の女性がかなりいるが、その人達は、実は日本語も達者である。日本と台湾の過去の歴史に由来するものであるが、先日も、最初は中国語で話していたのだが、そのうち「あなたは日本人だったのね。大陸の人かとずっと思ってました」と日本語で話しかけられた。「日本語がお上手ですね」と言うと、「ええ、私たちの世代なら皆、話せますよ。昔、あれだったでしょう・・」という返事。思わず「申し訳ない」と言ってしまったが、こういう時は、どう答えればいいのでしょうね??

【午前】【午後】

今朝は寝坊した。5時頃に一度目が覚めたのだが、また寝て、起きたら10時過ぎ。遅めの朝食後、12時過ぎに大学へ。
Widener LbでLobscheidの英華字典を出してもらう。デポジトリになっていたので、昨日コンピュータで請求しておいたもの。美本であった。館外には持ち出しできないので、私のストールに置いておく。併せて、「華英音韻字典集成」をチャージ。前々からこの2つの字典の影響関係をもう少しきちんと見ておこうと思っていた。残りの期間にやってみるつもり。
今日は、もう一つ別のことで、その後燕京へ。「化学」の「化」と、「化石」について考えるところがあるため。燕京で「物理小識」を見る。ここには、2つの版本があるが、「序」のある方が古い。ここに「化石」が出てくるのだが、関心があるのは、この構造である。荒川さんは、これを「動賓構造」と言うが、むしろ「動補構造」と呼んだ方がいいのではないかと思う。もちろん、「結果目的語」というのも中国語にはあるから、「動賓」と言っても差し支えないのだろうが「石」は「化した結果」である。ただし、「物理小識」のそれは、すでに1語と判断してもいいのではないだろうか?ついでに、「化石」という言葉は、別の意味で南朝宋代の『幽明録』で使われているようだ。「立望夫而化為立石、因以為名焉」。明代に入ると「身立枯而化石」というのもある。後者はまだフレーズだが、前者の用法はすでに複合語の可能性がある。「物理小識」の「松之化石」は、フレーズだが、「松化石」は「松+化石」だろう。この件は、いずれ書いてみるつもり。
家に帰ると、森瀬先生からの大著が届いていた。題字が素晴らしい。ゆっくり勉強させて頂くつもり。今日は、もう1通、ルーバンからの手紙あり。この夏に依頼しておいたマーシュマンの聖書のマイクロコピーの件。マイクロに撮ってくれるそうだが、値段が結構高い。$550-650とある。こうして見ると、アメリカのマイクロが如何に安いかがわかる。

【夜】

メールチェック。他

【今日の食事】

朝食:コーンフレーク、トースト、コーヒ
晝食:寿司、ピザ、アップルジュース
夕食:チキンスープ、サラダ、コーヒ


3/28-5/31にしたこと

  • 「イソップ中國語飜譯小史」(仮題)初稿(約32,000字)

6/1-7/10

  • 「イソップ中国語訳の系譜」(約40,000字)

今日コピーしたもの(マイクロを含む)

  • なし

パソコン關係

  • 特になし

【アメリカでの連絡先】

Keiichi Uhcida
C/O Mrs.Barbara Marchese
27Daniels St,Arlington,MA 02174,USA

or

Keiichi Uchida
Department of Asian Languages and Civilizations
2 Divinity Avenue,Cambridge,MA 02138,USA


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