1998/07/07/(火)
Red Book
今日、お昼に燕京レストランで食事をしていると、どこかで見た顔の中国人がアメリカ人の女性と一緒に入ってきて、私の隣の席に座った。よく見ると王丹氏だ。5月に燕京図書館で1時間ばかりの報告会兼質疑応答があった時に見て以来。その後、ボストンに居ると聞いてはいたが、実はハーバードの大学院で勉強しているとのこと。内に秘めたものとは裏腹に外見は非常に穏和な人である。5月の報告会で、ある参加者の「私達は事変後、すぐに国外に出たが、あなたは何年も牢獄に繋がれていたのだから、今度はゆっくりと勉強して欲しい」という言葉が心に残っているが、確かに柴玲やウルカイシとは違う印象を受けた。江澤民訪米やクリントン訪中がなければ、きっとそのまま牢獄に座すことも甘んじて受けたような、そんな感じだ。国内外の「民主化運動家」とは明らかに一線を画している。席上、事変の際の死者の数を聞く人がいたが、決して何人と断言はしなかった。そう、問題は数ではなくて、「人民」の側に立つべき解放軍が、その「人民」に銃を向けたその瞬間にその神話は崩れるのである。(ただし、断っておくが、だから「社会主義」には「人権」などないとアメリカなどが批判するのはお門違いというものだ。社会主義であれ、資本主義、民主国家であれ、実際は同じなのだ。共同幻想としての「国家」の逆鱗に触れた途端に強権は発動されるものである。「はい、そこまでよ」というわけだ。むしろ中国は自国の中だけでそれを行使したが、アメリカなどはよその国にまで出かけていって、しかも「正義」とか「自由・民主」の御旗の下で「やる」のだから余計始末が悪い。)また「民主運動にも必要不可欠なのは人文精神である」という王丹氏の言葉には重みがあった。運動の背後にはしっかりとした学問的、理論的裏付けが必要なのだ。彼には、ここでゆっくりと勉強して欲しいと心から願っている。
王丹氏のことに触れたついでに、書いてしまう。こちらに来てから、面白い本屋さんを2軒偶然見つけた。これを「面白い」と感ずるか否かは人によって違うだろうが、私個人は「面白い」と思った。1軒は地下鉄Harvard駅から一駅のCenter Square駅前の「Red Book Store」。最初、店の看板を見たときは、何かいかがわしい本屋かと思って入ったのだが、そうではなかった。もう1軒はハーバードから蘆華に行くまでにある「Revolution Book」。そう、その名の通りの本屋さんなのである。アメリカにその筋の專門書店があるとは一種の驚きである。ちょうど一昔前の、名古屋のウニタとか、京都の二月書房(五月書房だったかな?宍戸恭氏という初期の「試行」によく評論を発表していた人がオーナーだった。「現代史の視点」という本の著者でもある)の系統の本屋さんである。日本では最近、この種の本屋は、ほとんど見かけることがない(大阪だと梁山泊ぐらいか)。店には毛沢東やゲバラのポスターなんかが貼ってあるし、「馬列」の本も見ることが出来る。エンゲルスやディーツーゲンなんかの本は、本当に久しぶりに見た。反共の盟主の国にあって、彼らは一体どのような活動をしているのかに興味がある。総背番号制が徹底している国だから、当然マークされているだろうが、店員さんなんかを見ているとのんびりしている。本当に「何でもあり」の国だと実感する次第。なお、どうでもいい話だが、アメリカに合法組織としての「アメリカ共産党」は存在するのだろうか?
【午前】
今日あたりNewtonのメモリが届くはずなのであるが、家で待つことはせずに大学へ。今日は七夕だ。いい天気。先ず、Houghton Libへ先日頼んであったマイクロを取りに行く。それを受け取ってすぐYenchingで見てみる。なかなか面白いが紙焼きは日本に帰ってからするつもり。お昼は燕京レストランへ。王丹氏に会う。
【午後】
Yenchingの人に王丹氏はどこの学部かと聞いたところ、歴史系のよう。ボーゲル氏が引き受けているとのこと。書庫で資料調べをして、4時頃帰宅。どうやらメモリの配達があったようだが、バーバラさんが不在だったため明日に持ち越し。今夜中にインストールを完了したかったのだが、致し方なし。それより、予定の日まであと4日しかない。仕事をやってしまわないといけない。ヨーロッパで原稿を書く時間はないだろうから。
【夜】
メールチェック。
ホームページの更新、その他
【今日の食事】
朝食:マーフィー、ジュース、コーヒ
晝食:ランチスペシャル
夕食:チキン、クランベリーソース、ポテトと人参の煮物、サラダ、コーヒ
今夜はバーバラさんの娘夫婦と孫娘と一緒に食事。クランベリーソースとはケープゴッドの特産だが日本の羊羹みたいなもの。水中の植物(果物?)らしいが、デザートにしてもいけそう。しかし、ボストンではこれをチキンや七面鳥のソースにするらしい。美味なり。
3/28-5/31にしたこと
- 「イソップ中國語飜譯小史」(仮題)初稿(約32,000字)
今日コピー(全巻)したもの
- Couplet「Catalogus patrum Societatis Jesu qui ab anno 1581 usque ad 1681 in Sina」(Canton ca 1681-85)
- Alenio,Giulio「The Life and Passion of Christ」(China 1640)
いずれもHoughtonでマイクロに収めたもの。
パソコン關係
- PalmIII用の中国語OSについて昨日触れたが、早速インストールしてみた。GBとBig5のどちらかを選択するようになっている。とりあえずは漢字が多いBig5にした。手書きには未対応で、疑似キーボードを使用するが、これは十分使えそう。$20のシェアーウェアだ。日本語OSよりも安定している。
【アメリカでの連絡先】
Keiichi Uhcida
C/O Mrs.Barbara
27Daniels St,Arlington,MA 02174,USA
or
Keiichi Uchida
Department of Asian Languages and Civilizations
2 Divinity Avenue,Cambridge,MA 02138,USA