1998/10/13(火)

中断前の日記(7月最終分)へ


きのう/きょう/あした


「神」のお導き

この10年くらいは、文法研究の方はしばらく「おあずけ」で、もっぱら「翻訳語」特に、近代のヨーロッパ宣教師の著作の中国語に与えた影響みたいなことを中心にやっている。異文化接触の問題だ。「一体あなたの專門は何なの?」と聞かれると答えに窮するところであるが、もう少しこれに取り組むつもりである。従って、必然的にキリスト教と関係をもたざるを得ないわけだが、これも「神のお導き」かも知れないと思うときがある。
今日、大阪外大の米井さんから大著「キリスタンの文学-殉教をうながす声」(平凡社選書)が送られてきた。本が出たことは、斎藤さんの「ことふれ」で知っていたが、是非読みたいと思っていたところだった。まだ読みかけたばかりだが、そこに書かれていることは、まさに近代来華宣教師にも通ずるものである。「時間」の問題、既存の宗教(日本の場合、仏教)との関わり等々、それらが「翻訳」の際に当然反映されてくるわけである。ちょうど最近、メドハーストの「GODの中国語における翻訳の問題」という本を読みかけていたところで、非常に面白い。「GODの訳語」については、鈴木さんの優れた論考があるが、自分なりに一度考えてみたいと思っている。
ところで、米井さんの本には当然ながら、参考文献に小島幸枝氏や亀井孝氏の名前もよく登場してくる。こんな名前を見ると、何かしら「因縁」めいたものを感じたりするのだ。小島さんは実は私の大学の大先輩であり、共通の恩師を持つが、その國語學の恩師から、当時、授業中(國語學の語彙論の授業では「天草本平家物語」を読んだ)とか研究室でよく小島さんの話を聞かされたものである。「福井漢文學會」でも時たま、「ドチリナ」とか「サントスの御作業」とかの語彙について発表されたのを聞いたことがある。「漢訳聖書」にも興味をお持ちのようであるし、一昨年も「イエス」の漢字表記の問題(「耶蘇」の「蘇」の字が、普通は「くさかんむり」がない)について聞かれたことがある。あれやこれやで、今、私が「漢訳イソップ」をやっているのも、あながち偶然ではないなと思うのである。なお、亀井氏は私達の「現代言語学批判」の痛烈なる書評を書かれたことがある。
なにはともあれ、米井さんの本は、これから「じっくり」読んでみるつもり。アメリカまで送って頂いたことに、この場を借りてお礼申し上げたい。

【午前】【午後】

午前中は資料のコピー。量が多いので、燕京の半額の「東亜系」に行った。ところが、B4サイズ(厳密に言えばB4ではないが)はここも1枚10セントとのこと。まあ、仕方あるまい。これからは、町のコピー屋さんの方がいいかも。ハーバード大学の前の店は大体1枚5セント。
午後は、コピーしたものを折り畳み、パンチで穴をあけてファイルするといった作業。その後、先日Andover Libで探してもらっていた本が見つかったというメールがあったので、受け取りに行く。こんなふうに、見つからなかったり、Depositoryの本は、請求しておけば電子メールか電話で連絡してくれるようになっている。
ついでに、Medhurstの「Name of God in Chinese」(1848)がWidenerだけでなくて、ここにもあることが分かったので、それを探す。しかし、あるべき場所にない。係りの人に言うと、いろいろ調べてくれて、「確かにあるのだが、少し状態が良くないので、フォトコピーを撮ったのを製本して、丁度今登録中。5分待って下さい」とのこと。「5分待って」は、「しばらく待って」の意味だろうが、20分ほどで持ってきてくれた。「お待たせしましたね」と言われたが、本当に気持ちの良い対応だ。待ち時間に、これまた偶然にもバイブルの展示をやっていて、そこにモリソンの聖書(路加福音伝)が置かれていた。いわゆる「神天聖書」だが、私が日本で見たのよりも大型だ。しかも印刷が非常にきれい。本当に1812年のものだろうか?「展示が終わったら見せてもらえますか?」と聞くと「もちろん」という返事。有り難い。ただ「Rare Book」扱いだから家に持って帰るのは無理だろう。マイクロに撮ろうかと思っている。
5時過ぎ帰宅。帰ると米井さんの本が届いていた。これについては、上の「雑感」で触れるつもり。
昨日からこの家に来ているブラジルのご婦人は、どうやら玄米菜食主義者みたいだ。ブラジルでそういう関係のレストランを開いているとか。私も昔1年ほどやったことがある。砂糖なし、ミルクなし、白いパンだめ、肉だめ、大豆食品・・というやつだ。でも、バーバラさんが困っている。1ヶ月これは大変だ。

【夜】

メールチェック。他。

【今日の食事】

朝食:トースト、コーヒ
晝食:ビーフハンバーガー、ポテト、コーヒ
夕食:ポーク、グリーンピース、ライス炒め、サラダ、コーヒ


3/28-5/31にしたこと

  • 「イソップ中國語飜譯小史」(仮題)初稿(約32,000字)

6/1-7/10

  • 「イソップ中国語訳の系譜」(約40,000字)

今日コピーしたもの(マイクロを含む)

  • 「Fables of Aesop and other eminent mythologists with morals and reflexions」(1699)・・・いわゆる「L’Estrange」版イソップ(第3版)である。本書は、The life of Aesop, The fables of Aesop(201話), The fables of Barlandus(13話), The fables of Anianus(38話), The fables of Abstemius(99話), The fables of Poggius(22話), Miscellany fables(10話),A supplement of fables(117話)からなるが、とりあえずはAesopのみコピー。しかし、こんな本を借り出していいのだろうか?どうみても、貴重書のはず。
  • 「The Fables of Aesop」(1894)・・・こちらは以前にも紹介したことのある「Joseph Jacobs」版。以前に少しコピーをしてあったが、今日は残りを全部コピー。

パソコン關係

  • なし

【アメリカでの連絡先】

Keiichi Uhcida
C/O Mrs.Barbara Marchese
27Daniels St,Arlington,MA 02174,USA

or

Keiichi Uchida
Department of Asian Languages and Civilizations
2 Divinity Avenue,Cambridge,MA 02138,USA


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