優しい時の流れを

きのう/きょう/あした


2013/08/21/(水)

 今回訪れた「Herzog August Bibliothek Wolfenbuttel」に収められている主要な中国語(満文も含む)関連のManuscriptの請求番号とその中身は以下の通りである。

1. Cod. Guelf. 148 Blank.・・『正字四書』『天主實義下巻』『聖教日課下巻』『光霽字彙』『坤輿圖説下巻』『増訂廣輿全圖』『漢拉(+満)対照語彙表』。最後の語彙表は『華英通語』みたいに表組みがなされていて、5列3行。漢字の上にラテン語、横に音註、下に満文も記されている部分もある。恐らく清代のもの。これも今回の発見の一つ。
2. Cod. Guelf. 62.2 Extrav.・・『小題鳴書』「満文書」(書名不明)
3. Cod. Guelf. 91.2 Extrav.・・(1)から{11)までは漢字の練習帳或いは台帳みたいなもの。(12)はいわゆる中国語ーポルトガルのピジンテキスト『佛郎机化人話簿』、(13)も同様の書物で量が多く全82葉。対照語彙、対照短文の以外に漢字で書かれたポルトガル語(ただし前者のものと表記がほとんど違ってはいる)の長い文章も付されている。この(13)についてはこれまで言及がない。新しい発見と言えるかも。(14)も1頁だが(13)の続き。
4. Cod. Guelf. 115.1 Extrav.・・全て満文の書(文字、文法等)
5. Cod. Guelf. 117a Extrav.・・いわゆるドチリナキリシタン。書名はない。31.5cmx20cm、本文9頁、7行24字。3頁までには漢字以外に音註、ラテン語訳が付されている。入声表記なし。こなれた白話文。今回最大の収穫かも。
6. Cod. Guelf. 117.1 Extrav.・・『京本正韻白文』『名公日記故事』『萬寶幼學須知 鼇頭雑字大全』『幼學須知』『増補素翁指事雑著全集』『家中書札』『全像列國志傳』『康煕二十五年丙寅暦法璇璣通書』「満文書」『字彙巻末』
7. Cod. Guelf. 118.1 Extrav.・・『霊言蠡勺巻下』
8. Cod. Guelf. 130.4 Extrav.・・『孔子家語』「満文書」

 以上がこの図書館に収められている中国語関係のManuscriptのほぼ全容である。確かに量が多くはないが、それでもかなり貴重なものが収められている。同学の士の些かの参考になればと思う。

 それにしてもこの図書館のサポート体制は素晴らしい。ゲストハウスも整っているし、そこに入っているレストランも最高だ。これまでドイツに来て初めて美味しいイタリアンに巡り会えた。お昼はランチメニューもあってリーズナブル。なにせ味がいいのが何よりだ。
 この図書館にはフェローシップがあって、院生やまだ定職のない人には1月1600ユーロ、定職者にも1月1250ユーロの支給があるのだ。2ヶ月以上1年未満らしいが、若い院生諸君は応募してみたらいいと思う。私も何回か応募しようとしたことがあるが、いつも応募締め切りを過ぎていた。今日、ここのオフィスからメールが入り明日はディナーパーティとか。あいにく明日のお昼にはここを出るので参加できないが、月に何度かこういった催しものがあるようだ。

 この町全体の雰囲気も格別だ。木組みの家。歪み方も全部違っている。夕方6時にはほとんどの店が閉まる。特に儲けなんか考えていないよう。夕方の広場には鳩も水を求めてやってくる。「優しい時」の流れを全身で感じる。日本人が失ってしまったものがここにはあるような気がする。